2020-05-10から1日間の記事一覧

第十七話 幻の広場

私は生来の方向音痴で、子どものころ、何度迷子になったかわからない。そのころの話なので、はたして不思議なのかどうかもあやふやである。 小学校低学年のころの話だ。家から少し行ったところに「地獄谷」と呼ばれる場所があった。無論、正式な名称ではない…

第十六話 ムカデの気配

友人Aは若いころ、設計事務所で働いていた。その事務所で手掛けていた、都内のオープン前のレストランでの話である。 作業も大詰めを迎え、翌日に消防のチェックを控えていた。照明など、まだ仕上がっていない部分があり、Aは友人Fに手伝いを求め、徹夜で作…

第十五話 ケーキと日本刀

私はお菓子教室に通っていたことがる。小さな教室で、登録しておくと教室の日程と作るお菓子の連絡が来るので、参加したいと思えば申し込みをする。定員は各回4名で、早い者勝ちというシステムだった。なので、毎回集まる顔ぶれも違うため、簡単な自己紹介か…

第十四話 葬儀の夢

同僚の女性Kから聞いた話である。 就職と同時に故郷を離れ、東京で暮らし、結婚し、子ども小学生になった。そんなある日、Kの父親が体調を崩し、入院。容態は思わしくなく、危篤状態になること数度。その度に子どもを連れ帰省していたが、Kの父親はなんとか…