2020-06-21から1日間の記事一覧

第三十三話 おかしなボール

教習所へ通っていたころだから、二十歳くらいの話だ。教習所へ向かう途中に、バッティングセンターがあった。時間調整のためや、嫌な教官に当たってしまったときの憂さ晴らしに、私はときどき、ここに寄った。 ある日のこと、私はいつものように、一番左のボ…

第三十二話 賽の目

作家のT先生から聞いた話である。 ちょっとした集まりで、知り合いのFが妙なことを言い出した。「ぼくね、すごいことができるようになったんだよ」 T先生のほかにふたりの人がいて、Fの話に耳を傾ける。 Fは小さめのサイコロを4つと、湯飲みをひとつ取り出し…