第二話 軽井沢の山荘にて その二
第一話のときにも書いたけれど、私はあまり、霊というものを怖がらない。もちろん、怖い思いをさせられたら、それなりに怯えるだろうけれど、今のところ、さほど怖い思いはしていない。
それに、私が霊体験っぽいことにあったのは中学・高校のころが主で、しかも「何度か見た」という程度のものである。なので「九十九は霊感がある!」などと勘違いなさらぬようお願いしたい。
さて、前回書いた軽井沢の山荘でのことである。あれは初めての合宿だったから、私は中学2年生だ。
この日も、夜の勉強会は大学生を交えての宴会となっていた。
トイレに立った私は、渡り廊下を通り、食堂を抜け、廊下の突き当りのトイレで用を足した。戻る際、なぜか自分たちの部屋が気になり、戸を開けた。
部屋は左右に2段ベッドがあり、1段の幅が2畳ほどある。1段にふたりが寝られるので、最大8人部屋であった。突き当りに大きな窓があり、内側の部屋は中庭を、外側の部屋は森を見ることができた。
このときの部屋は外側だったので、窓からは舗装されていない道を隔てて森が見えた。ただこれは昼間の話で、夜は闇しか見えない。
戸を開けた私が見たのは、窓いっぱいの大きさの、青白い顔だった。髪はやや長めだったが、男だったと思う。窓の外に人がいた可能性もあるが、この大きさはあり得ない。1メートル以上の顔だ。
なぜか私は驚かなかった。顔は、私を睨んでいたわけでもない。やや下方を、ぼんやりと見ているようだった。
「あ、顔だ」
そう思っただけである。そのまま宴会に戻ると、顔のことなどすっかり忘れ、盛り上がった。
翌日の朝食の際にふと思い出し、友人に話したら、ものすごく驚かれた。「でも。怖くなかったよ」と言うと「そういうことではない」と言う。「怖くないなら、べつにいいのになぁ」と思う私であった。
はい、これにて二本目の蝋燭を吹き消します。