第七話 どこから来た?
ユリ・ゲラーという人がいる。スプーン曲げや、止まってしまった時計を動かして、一躍「超能力者」として一世を風靡した人である。彼が日本で人気絶頂だったころの話。
私の友人Aの話である。彼女は当時、短大に入り、ひとり暮らしを始めたばかりだった。ユリ・ゲラーの特番が、頻繁に放映されているころで、その夜も彼はテレビに映っていた。
「では、テレビの前の皆さんも、スプーンや、動かなくなった時計を用意してください」
番組終盤の恒例である。ユリ・ゲラーがパワーを送るので、スプーンを手にした人は「曲がれ!」と念じ、時計を用意した人は「動け!」と念じる。このコーナーが始まると、テレビ局にはじゃんじゃん電話がかかってきて「スプーンが曲がりました!」「時計が動きました!」との報告がなされる。会場がどよめく中、「また次回をお楽しみに!」と締めくくられる。
Aもスプーンを片手に「曲がれ! 曲がれ!」と、一心不乱に念じていた。
ガタガタッ!
突然、物音がした。窓からである。Aの部屋はアパートの2階で、ベランダはない。人が立つにはちょっと困難であるが、布団は干せるので不可能ではない。
恐る恐るカーテンを開けるA。すると……
ニャ~~~ッ!
どこから来たのか、猫がいた。それも、網戸にしがみついた状態で。
Aは、それはそれは驚いたが、猫は網戸の中ほどでどうすることもできないでいる。仕方ないので窓を開け、なんとか猫を剥がし、抱いて玄関から外に出してやったそうだ。
猫はどこから来たのか? なぜ突然網戸なのか?
これはもう、ユリ・ゲラーのパワーが誤作動して、スプーンではなく空間を捻じ曲げたに違いない。
冗談は脇によけても、不思議と言えば不思議な話である。
はい、蝋燭七本目。