第八話 煙

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 当時、できて間もないプラネタリウムに就職した友人Oから聞いた話。スタッフの間では「なにかいる」という実しやかに囁かれていた。そういった話はどこにでもあるもので、多くは噂話の域を出ないが、頭のどこかに残っていれば、あれもこれも霊の仕業に思えてしまうもの。
 だが、Oの話は、そう言って片付けてしまえるのだろうか?
 プラネタリウム上映中は、当然、灯りを消す。上映中、トイレに立ったり、気分が悪くなったりする人がいないか目を配るのも、スタッフの仕事だ。
 と、ある座席の上に煙が漂っている。
 タバコだ。
 そう思ったOは、注意しにその座席に近づいた。けれど、そこには誰もいない。
 プラネタリウム番組にはクイズも組み込まれていて、座席についているボタンで回答するシステムになっており、どこが空席でどこが客のいる席かわかるらしい。煙が漂っていた席は、確かに空席だった。
 この煙は何人ものスタッフが目撃しており、注意に向かうものの、やはり空席なのだという。
 煙の正体は不明だが、当然のことながら、プラネタリウムは煙が漂っていてはおかしい場所である。

 蝋燭八本目。吹き消したときに昇る煙は、怪異ではありませぬ。

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