第十四話 葬儀の夢

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 同僚の女性Kから聞いた話である。
 就職と同時に故郷を離れ、東京で暮らし、結婚し、子ども小学生になった。そんなある日、Kの父親が体調を崩し、入院。容態は思わしくなく、危篤状態になること数度。その度に子どもを連れ帰省していたが、Kの父親はなんとか危機を脱していた。
 それは幸運なことであったが、度々子どもに学校を休ませ、新幹線を使っての帰省はかなりたいへんなことだ。あるとき腹をくくり「余程のことがない限り、帰省しない」と決めた。
 そんなある晩、夢を見た。父の葬儀の夢だ。祭壇に飾られた花、遺影、線香の香り、うつむく家族と親戚ーー。それはリアルな夢だったと言う。
 翌朝の電話で、Kは父親が息を引き取ったことを知る。
「ああ、お父さん、教えてくれたんだな……」
 そう思ったそうだ。
「虫の知らせ」というものだろう。霊体験など持ち合わせないKが、唯一体験した不思議な話である。

 十四本目の蝋燭を吹き消します。 

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