第二十六話 小さいおじさん

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 一時期、テレビなどでも「小さいおじさん」の目撃談が流されたが、私の身の回りにもひとり、目撃者がいた。
 私がパン屋さんで働いていたときだから、もう13、4年前に聞いた話である。同僚のHが話してくれた。
 Hが子どものころ、法要かなにかで、親戚一同がお寺に集まったときのこと。お墓に手お合わせ、戻る途中、にわかに雨が降ってきた。慌てて本堂脇の休憩所に駆け込み、雨宿りをした。
 外を見ながら、立ち話する大人たち。子どもの目線は低い。Hは大人たちの足許に、妙なものを見た。10cmに満たない小さなおじさんが、親戚の伯父さんのかかとを、一所懸命押していた。母親に「小さい人が、なにかしてる」と言ったが、大人同士のおしゃべりの最中で取り合ってもらえない。じっと見ていると、ついに押し出されたように、伯父さんが足を踏み出した。
「お、雨、上がったな」
 休憩所から出た伯父さんは、空を見上げながら言った。
 Hは「たぶん、小さいおじさんが、もう雨が上がるから行けって教えてたんだと思う」と言っていた。
 Hはこの他にもう一度、小さいおじさんを見かけたと言っていたが、忘れてしまった。この話も、2度の目撃談が混ざってしまっているかもしれないが、ポイントは押さえていると思う。
 小さいおじさんは、妖精や精霊のような存在なのだろうか? なぜ、おじさんの姿なのだろう? 私も見かけたら、インタビューしてみたい。

 二十六本目の蝋燭、吹き消します。

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