第十話 父の間取り図

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 友人Mが、家を建て直すときのことである。
 Mは学生のころ、父親を突然に亡くした。彼の父は小さな会社の社長だったので、Mはわかないながらも一所懸命調べたり勉強したりして、会社を畳んだそうだ。
 もともと商才のあったMは、父親とは全く別の道でだが、順調に商売を軌道に乗せた。古くなった家を建て直すことにしたのは40前だったか。
 生まれ育った家を壊すのは、なかなかに思うところ、感じ入るところがあるそうだ。
 新しい家の間取りも決まり、取り壊す日も決まり、家の整理をしていたときのことだ。亡き父の遺品から、家の間取り図が出てきたそうだ。
 遺品を整理することは、これまでにもあった。けれども、このタイミングで出てきた間取り図は、亡くなった父親からのメッセージではないだろうか?
 Mも「父に『お前もこういう年になったか』と言われた気がしたよ」と言っていた。
 Mの父親は、嬉しかったのだと思う。

 十本目の蝋燭は、微笑みながら吹き消そう。

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