第二十四話 大きな流れ星
職場のNが、高校生のときの話だ。
Nは当時、北海道に住んでいた。高校へは電車通学。部活が終わってから帰宅すると、けっこう遅い時間になってしまう。幸い、近所に同じ高校に通う友人がいたので、ふたりはいっしょに帰っていた。
夜7時。もう辺りはすっかり暗い。けれど友人とおしゃべりしながら歩くので、怖くはなかった。
ふと、Nの視界の端に、なにかが映った。電柱の上の方。電線をなぞるように、月ほどの大きさの明かりが、すうっと動いている。青白く光り、尾を引くように移動する明かりは、3秒ほどで消えてしまった。3秒とは、短いようで、けっこう長い。
「今の見た!?」
「流れ星かな!?」
「大きかったよ! 隕石かもしれないね!」
少し興奮して、そんなことを言い合った。
家に帰り、さっそく母親に、今しがた見たことを話した。
「バカ! そりゃ流れ星じゃなくて、人魂だよ!」
そう聞いたとたん、ゾッとして鳥肌が立った。Nの母は、かなり霊感の強い人だったそうだ。そんな母が怖くて、Nは「早く家から出て自活したい」と思っていたそうだ。
翌日、友人に話すと、やはり母親に同じことを言われたそうだ。
二十四本目、吹き消します。